そば屋の修行を終え、25歳で福島に戻ったコブさん。次に選んだのは、介護の仕事でした。
第2回は、グループホームで出会ったおばあちゃんたちとの忘れられないエピソードから、休日に見ていたハリウッド映画、そしてアメリカントイのお店「COBSANYA」が生まれるきっかけまで。介護の仕事を15年続けたコブさんの背中を押したのは、夜勤中に相談した、ひとりのおばあちゃんの言葉でした。
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この回の話題
| 時間 | 話題 |
|---|---|
| 00:25 | 前回のふり返り。25歳で福島へ |
| 01:11 | 仕事は決めずに帰ってきた。選んだのは介護 |
| 02:17 | まずはヘルパーの資格から |
| 03:04 | 研修で思った「俺、好きかも」 |
| 04:45 | 認知症の方のグループホームへ |
| 05:38 | 夜勤で心臓が止まりそうになった話 |
| 07:15 | おばあちゃんたちが教えてくれる昔の須賀川 |
| 08:26 | 「こんな女たらし!」と怒られた夜 |
| 10:07 | 休日は映画。何度も見る『バック・トゥ・ザ・フューチャー』 |
| 12:04 | SFは苦手。だからお客さんに教えてもらう |
| 15:06 | レンタル店でジャケットを見て選ぶのが好きだった |
| 16:23 | ニューバランスはUSA製にこだわる |
| 17:05 | 介護15年、空想し始めたお店の姿 |
| 19:03 | このまま20年続けられるのか |
| 19:50 | 夜勤中、おばあちゃんに相談した |
| 20:52 | 店名の由来とロゴの誕生 |
| 22:55 | 1日限定のイベントに向けて、おもちゃを集め始める |
福島に戻り、介護の世界へ
25歳で福島に戻ったコブさん。住んだのは郡山の実家で、仕事はまだ決まっていませんでした。お母さんの体調がよくなかったこと、これまで迷惑をかけてきた恩返しをしたい気持ち。それが結びついたのが、介護の仕事でした。
とはいえ、何から始めればいいのかもわからない。調べるうちに資格が必要だと知り、26歳のときにアルバイトをしながら半年ほどかけてヘルパーの資格を取りました(今は「初任者研修」という名前に変わっているようです)。
研修で思った「俺、好きかも」
研修では、デイサービスや特別養護老人ホーム、ショートステイ、ホームヘルパーなど、いろいろな現場を回りました。そこで思ったのが、「あ、俺、好きかも」。
今でも覚えているのが、デイサービスで会ったおばあちゃん。自転車のようなマシンに乗って、ニコニコしながら一生懸命運動している。話しかけると「今日は新しい人が来るから、かっこいいところを見せるんだ」。デイサービスは楽しいぞ、と新しい人に見せてあげようとしていたのです。
介護はどこか暗いイメージで語られがちです。でも実際に入ってみると、とても明るい世界だった。どの施設に行っても、必ず面白いおばあちゃんに出会えたそうです。
グループホームの夜
就職したのは、認知症の方が暮らすグループホーム。デイサービスと違って入居者さんはそこに住んでいて、職員は24時間365日、誰かしらがいます。
夜勤は、うっすら明かりがついているだけの暗がり。もともと怖がりなコブさんの後ろに、足音を立てないおばあちゃんがそっと立っていることもありました。いちばん驚いたのは、見回りを終えてひと息ついていたとき。気配を感じて振り向くと、薄明かりに照らされて、言葉を話せなくなった100歳近いおばあちゃんが車椅子でにっこりしていた。困りごとがあって、呼ぶに呼べずに来てくれたのでした。驚くコブさんを見て、おばあちゃんは口元を押さえて笑っていたそうです。
おばあちゃんが教えてくれる、昔の須賀川
入居者さんたちは、いろいろな話を聞かせてくれます。多かったのは戦争の話。99歳のおばあちゃんは、須賀川の近くに住んでいた方で、昔このあたりは花街で芸者さんがたくさんいたこと、小さいころに米軍の兵隊さんからチョコレートや飴をもらったこと、ドライブで通るあそこは防空壕だったことを教えてくれました。
「こんな女たらし!」
いちばん印象に残っているのは、ある日のこと。「家に帰りたい」と荷物をまとめたおばあちゃんと長い時間話していると、別の90代のおばあちゃんの視線を感じます。見ると、ほっぺを膨らませて怒っている。近くに行くと、ひと言目が「こんな女たらし!」。
どうやらコブさんを、自分の旦那さんだと思ったらしいのです。その怒り方がかわいくて、興奮させないように「ごめんね、そういうつもりじゃなかったんだ」と謝ると、ケタケタ笑ってくれたそうです。
休日は映画。ハリウッドが好きだった
介護の仕事をしていたころの休日は、飲みに行くか、映画を見るか。アメリカントイに関わることはまだまったくなかったそうです。
何度も見ているのは、王道の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。展開もセリフもわかっているのに、毎回ドキドキしてしまう。サスペンスやミステリーも好きで、エドワード・ノートンの演技に圧倒された法廷ものの話でも盛り上がりました。
SFは苦手。だから教えてもらう
意外なのは、SFが苦手なこと。あまりにも現実からかけ離れた世界には、気持ちが入っていけないのだとか。『E.T.』はヒューマンドラマなのでまだ大丈夫。お店で『スター・ウォーズ』好きのお客さんに聞かれると、「踏み込めていない部分があるので、教えてください」とお願いするそうです。詳しい人にとっては、教えてと言われるのがうれしいもの。コブさんらしい接客です。
ジャケットで選ぶのが好きだった
サブスクのなかった時代、よく通ったのはレンタルビデオ店。検索するのではなく、ジャケットと裏のあらすじを見て、ビビッときたものを借りるのが好きでした。好みはやはりハリウッド。『ダイ・ハード』や『トップガン』、『スピード』のようなド派手な作品も好きだそうです。
ファッションでは、ニューバランスの990シリーズのUSA製にこだわっていたことも。「アメリカの国旗を見るだけでゾクゾクする」。関西出身の隆志さんには、ない感覚だそうです。
おばあちゃんに背中を押されて
介護の仕事を15年ほど続けたころ、コブさんは「空想したい」時期に入ります。お店の前には木のブランコがあって、みんなが遊べる。中に入ると、アメリカントイがいっぱい。そんな空間をつくったら楽しいだろうな、と思い描くようになりました。
一方で、安定した収入を守るのか、新しい扉を開くのか。天秤にかけていた時期でもありました。長く続けるうちに役職がつき、入居者さんと向き合う以外の仕事が増え、プライベートの時間も削られていく。これをあと20年続けられるのか。
「人間は一度きりの人生なんだよ」
悩んでいたとき、夜勤中に眠れないおばあちゃんに相談しました。返ってきたのは、「人間は一度きりの人生なんだよ。やりたいと思ったことは、びちっとやってみたらいい」。
壮絶な人生を送ってきた方の言葉は、同世代の飲み会で交わす話とはまったく違う深みがありました。「ばっちゃんが言うんだから、本当なんだろうな」。その一言に背中を押されたことが、とても大きかったそうです。
店名とロゴの誕生
店名の「コブさん」は、息子さんの名前から。ロゴのキャラクターは、もともとコブさんの手描きでした。2022年11月、1日限定でブースを借りてお店を出してみることになり、ロゴがあった方がいいと自分で描いたのが始まりです。1周年を迎えるころ、キーホルダーをつくるためにイラストレーターさんに清書をお願いし、それが今の看板のデザインになりました。
お店の前にブランコはないけれど、中にはアメリカントイがいっぱいあって、みんなが集まってくる。空想していたお店は、ちゃんと形になっていました。
その1日限定のイベントに向けて、コブさんは面白いおもちゃを選んで集め始めます。そしてそこで、いろいろな出会いが待っていました。続きは次回です。
印象に残った一言
人間は一度きりの人生なんだよ。やりたいと思ったことは、びちっとやってみたらいい。(グループホームのおばあちゃんの言葉)
出演者

- 小野寺祐貴(コブさん):須賀川市の街なかにあるアメリカントイのお店「COBSANYA」オーナー。オンラインストア / ブログ
- はな & 隆志:移動販売の珈琲屋「GALATA COFFEE」を夫婦で営む。ウルトラFM「サンライズすかがわ」月曜パーソナリティ
