存続の危機。須賀川市立岩瀬図書館のこれからを考える|妻とか、母とか、娘とか、女とか。#7

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美郷さんのゲストハウス「Nafsha」がある須賀川市の岩瀬地区。そこにある小さな図書館「須賀川市立岩瀬図書館」が、今、閉館の危機にあります。約40年前、「農村にこそ図書館を」という思いから生まれた図書館です。

今回は、この図書館の何が素晴らしいのか、今何が起きていて、何が問題なのか。そして市民に何ができるのかを、GALATA COFFEEのふたりと語り合いました。「答えはないから、リスナーの方とも一緒に考えたい」という美郷さんの思いから生まれた回です。

※この記事は番組での発言をまとめたものです。数字や市の方針については、収録時点での出演者の理解や試算をもとにしています。最新の情報は須賀川市の発表をご確認ください。

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この回の話題

時間話題
00:00予定を変更して特別編に
01:54収録は今回も「暁荘」から
03:12岩瀬図書館が存続の危機に
04:25なぜ閉館の話が出ているのか
06:29「農村にこそ図書館を」という思い
08:46削っていいものの優先順位
10:20靴を脱いで上がる図書館
11:45図書館は本を借りるだけの場所じゃない
16:00文化的な施設と、市の財政
19:27隣にあるアーカイブセンター
24:48意思決定のプロセスを知りたい
37:10須賀川にはポテンシャルがある

「農村にこそ図書館を」から生まれた図書館

岩瀬図書館は、合併前の岩瀬村でつくられ、岩瀬地区でただ一つの図書館です。美郷さんが運営するメディア「ff_私たちの交換日記」で以前取材したところによると、1985年に開館し、収録の前年に40周年を迎えました。

中心となったのは、当時の村長。「農家の子どもに勉強させてもしょうがない」ではなく、農村で暮らす人にも学ぶ権利があり、その知識を支えるためには図書館という場が必要だ。そう強く考えて設立に至ったそうです。美郷さんによれば、当時としては東北で初めての村立図書館だったといい、先進的な取り組みでした。

靴を脱いで上がる、光の入る空間

建物は、建築の専門家から「昭和モダン建築のいい例」と言われることもあるそうです。こじんまりとしているのに、光の取り入れ方がとても上手。以前は天井にも光を取り込む窓があったといいます(震災で壊れ、今は閉じているようです)。

農村らしい工夫もあります。畑仕事で靴が汚れていても気兼ねなく入れるように、靴を脱いで上がるつくりに。入り口の水道も、農作業帰りの人に使ってもらうためのものです。

聞き手のふたりも、すぐ近くまで何度も行っていながら、「貴重な建物だ」と聞くまで、それが図書館だと知りませんでした。初めて入ったときは「美術館に入ったような感覚だった」といいます。

今、何が起きているのか

きっかけは市の財政です。保育園やほかの図書館も含め、公共施設をこれからどうしていくかが議論されています。美郷さんによると、市の提案は、図書館の建物は閉じ、隣にあるコミュニティセンター(旧村役場)の一室に本を移して、司書のいない無人の貸し出し機能だけを残すというもの。建物をどうするかは、収録時点ではまだ決まっていないようです。

実は前年にも一度、閉館の話が出ていました。そのときは地元の住民が立ち上がり、約3000人分の署名を集めて提出。開館時間の短縮や休館日を増やす形で一度落ち着いたものの、その1年後に今回の話が出てきたといいます。市は年度末には方向性を決めたい考えで、時間はあまり残されていません。

番組で紹介された数字

美郷さんが公開されている情報をもとに、AIも使って大まかに調べたところでは、岩瀬図書館の費用は年間約2800万円。そのほとんどが人件費で、施設を維持するための費用は年間約300万円だそうです。「そこさえ最低限まかなえる案が出せれば、市も残す気持ちになるかもしれない」というのが、美郷さんの考えです。

※これらの数字は番組内での概算です。正確な金額は市の資料をご確認ください。

「結論ありき」に感じる話し合い

市と市民が公共施設のこれからを話し合う懇談会も開かれています。ただ、参加した人からは、閉館の方向で話が進められ、「のれんに腕押し」の印象だったという声もあるそうです。一度閉じて人が入らなくなった建物を生き返らせるのは、とても難しい。「このまま黙っていたら、本当になくなってしまう」と美郷さんは話します。

図書館は「本を借りるだけ」の場所じゃない

本をコミュニティセンターに移せば、借りることはできる。でもそれだけではない、と三人は口をそろえます。

  • 司書はキュレーター:どの本を選び、季節や話題に合わせてどう並べるか。市民のリクエストにも応える。本を置くだけでは、その仕事がなくなってしまいます
  • 空間そのものに価値がある:たくさんの本に囲まれて、くつろいで過ごせる場所。図書館で働いたことのある美郷さんは、背表紙を眺めるだけでも得るものがあると話します
  • 近くにあることが大事:市の中心部には大きな図書館のあるtetteがあります。でも、運転できないお年寄りや子どもにとって、それは平等とはいえません。岩瀬や長沼、大東など、tetteに行ったことがないという人も少なくありません

本に興味を持つタイミングは人それぞれ。そのとき、近くに本に触れられる場所があるかどうか。「AIやネットの時代だからこそ、本の手触りや、たくさんの本に囲まれて過ごす機会は貴重になる。本屋さんも減っている今、それを果たせるのは図書館だけ」と美郷さんは言います。

隣のアーカイブセンターと、優先順位への疑問

岩瀬図書館のすぐ隣には、数年前にできた特撮のアーカイブセンターがあります。須賀川が特撮監督の出身地であることから、特撮に使われた資料を保管・公開する施設です。

番組で話された内容をまとめると、次のとおりです。

  • 建物は国の復興予算で建てられ、運営費は市が負担している。美郷さんの試算では、空調などを含めて年間3000万〜4000万円ほどかかっている
  • 権利の関係で入館料を取りにくく、入館は無料
  • 来館者は年間2万〜3万人ほど。県外、関東など全国から人が訪れ、駅からタクシーで来る人もいる
  • それなのに、周りには飲食店もカフェもほとんどなく、訪れた人がお金を使える場所がない

観光で地域を盛り上げることも目的の一つだったはず。本来なら、隣の図書館に足を運んでもらう相乗効果も見込めたはずです。それが生まれないまま、アーカイブセンターは市の予算で維持され、市民が大切にしてきた図書館は削られる。「外から見ると、すごく矛盾しているように見える」と美郷さんは話します。

知りたいのは「意思決定のプロセス」

美郷さんが一番問題だと感じているのは、どういう経緯で何が決まったのかが市民に見えないことです。以前、過疎地域の予算の使い方を話し合う場で「市民の意見をどう生かして結論に至ったのか、そのプロセスは開示されるのか」と尋ねたところ、質問の意図が伝わらなかった経験もあるといいます。市内のモニュメントや、市が全戸に配布した冊子などへの支出にも、「削るべきものは他にあったのでは」という声が上がりました。

一方で、「市の職員一人ひとりに悪い人はいない。構造の問題もある」とも。担当者によって結果は大きく変わる。市にしかできないこと、民間に任せた方がいいことをきちんと分け、数字では測れないものを守るために力を発揮してほしい。それが三人の願いです。

補助金に頼る構造への危惧

南相馬出身の美郷さんは、「豊かになれる」と原発が誘致された歴史と、震災後に補助金が大量に入る今を重ね合わせます。「原発が補助金に形を変えただけで、依存する構造は変わっていない」。あるから使う、使わなきゃいけない、というお金の使い方は不健全だといいます。

「箱物は何年かすれば老朽化する。人に投資できる仕組みにしないと、持続可能な未来はつくれない」。地元の方からもそんな声を聞いた美郷さんは、その人を育てるためにこそ図書館が必要だと話します。「文化や教育にお金をかけない自治体は、絶対に衰えていく」。

市民にできること

怒っているだけでは、何も変わらない。番組の後半では、市民の側からできることを考えました。

月に20万〜30万円を、自分たちで

施設の維持費が年間約300万円なら、月にすれだ20万〜30万円ほど。図書館の機能を使いながら、そのくらいを自分たちで生み出せないか。「そこにこそやりがいがある」と美郷さんは話します。

しかも隣には、全国から年間数万人が訪れる施設がある。タクシーで来るほどの人たちは、お金を使うつもりで来ているはずです。岩瀬の野菜を並べる朝市、ひと息つける喫茶。地元にこだわらず、新しい発想で挑戦できる条件がそろっています。珈琲屋のふたりにとっても、身近な話です。

全国に届ける

オンラインで署名を集めている人がいて、全国から約6000人分が集まったそうです。岩瀬の住民が集めた署名の倍ほど。「これは全国のいろんな地域に当てはまる問題。市民だけでなく全国から注目を集めるのが、一番効果的だと思う」と美郷さん。隣に「特撮」という強いキーワードがあることも、関心を引くきっかけになります。「怒っているだけじゃなく、クスッと笑えるような発信の方が人は食いつくかもしれない」というアイデアも出ました。

今すぐできること

  • 知る:岩瀬図書館の歴史や建物については、「ff_私たちの交換日記」の記事にまとめられています
  • 行ってみる:建物好きの方は、天井や家具のつくりまでぜひ見てほしい。居心地のよさは、行けば分かります
  • 話し合いの場に参加する:市の説明会や懇談会に行ける人は、ぜひ足を運んでほしい
  • 一緒に考える:「一人で考えるには限界がある。一緒に考えたいという人が出てきてくれたら、すごくありがたい」

印象に残った一言

岩瀬図書館の問題だけじゃなくて、これを通して、文化的な資産をどう扱うかが見えてくる。

出演者

  • 佐藤美郷:南相馬市出身の編集者・ライター。メディア「ff_私たちの交換日記」とゲストハウス「guesthouse Nafsha」を運営するローカルエディター
  • はな & 隆志:移動販売の珈琲屋「GALATA COFFEE」を夫婦で営む。ウルトラFM「サンライズすかがわ」月曜パーソナリティ