築60年のアパートに、茶室と枯山水を。須賀川「暁荘」7号室ができるまで【公開収録・前編】|妻とか、母とか、娘とか、女とか。#6

築60年のアパートに、茶室と枯山水を。須賀川「暁荘」7号室ができるまで【公開収録・前編】 podcast

今回は番組初の公開収録。須賀川の街なかで改装が進む古いアパート「暁荘」の一室からお届けします。

ゲストは、第4回でも名前が出た「古道具 時雨」の石井睦子さんと、「クラニスム」の安藤友美さん。お二人が手がけたモデルルーム「7号室」ができるまでの話を、前後編で聞きました。

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この回の話題

時間話題
00:40初の公開収録、暁荘から
01:20ゲスト紹介:石井睦子さんと安藤友美さん
02:009月の内覧会
03:10第4回にも登場した「時雨」さん
04:10学生時代からの「憧れの大先輩」
05:10「やりたいです」とオーナーへ
06:10時雨の店づくりにも関わった縁
07:40物件が出たのは2025年6月
09:10建築から一度離れた理由
11:20安藤さんのこれまで
12:00震災の年に、設計事務所を
13:00大阪で過ごした12年
13:40築60年、昭和30年代の建物
14:00風呂なし、3畳と6畳
14:50空き家にワクワクする
16:10建物の状態は悪くない
17:00あるものを、できるだけ残す
18:00茶室と枯山水
20:20家賃を上げないための素材選び
21:20二人三脚の設計と現場
22:00オーナーの倉庫にあったダクト
24:30見学は問い合わせで

街なかの古いアパート「暁荘」

暁荘は、須賀川の市街地にある古いアパート。9月の3連休には、改装が終わった何部屋かを見られる内覧会が開かれました。家族で訪れた美郷さんは、子どもを連れてわちゃわちゃしてしまい、じっくり話を聞けなかったそう。この場所がどういうところなのか、なぜ改装が始まったのか、お二人がどんな思いで7号室をつくったのか。それを聞きたくて、今回の公開収録になりました。

石井さんは、第4回でNafshaの縁をつないだ人として名前が挙がった「時雨」さん。美郷さんが石井さんと直接話したのは、この内覧会が初めてだったそうです。一方、石井さんと安藤さんの付き合いは長く、石井さんが学生のころ、安藤さんが勤めていた事務所にインターンのような形で通っていたのが始まり。当時から今まで、ずっと「憧れの大先輩」なのだといいます。

「やりたいです」と手を挙げて

暁荘は、時雨さんのお店からも、安藤さんの事務所からも見える距離。物件の話を聞いた石井さんは、建物を買ったオーナーに直接「やりたいです」とお願いしました。すぐに安藤さんにサポートを頼み、安藤さんも駆けつけてくれたそうです。

物件が売りに出ていると聞いたのは、2025年の6月ごろ。アパートと家が一緒で、建物の割に手頃な価格だったため、周りでもざわざわしていたのだとか。その話を聞いたオーナーがすっかり乗り気になり、決めるのは早かったものの、引き渡しまでには時間がかかったそうです。

実は、安藤さんの夫も、10年ほど前に時雨さんの間仕切り壁や建具をつくった人。当時、安藤さん一家は大阪に住んでいて、夫だけが2週間ほど須賀川に来て工事をしたのだそうです。

もう一度、空間をつくる

石井さんは大学で建築を学びましたが、仕事としては一度離れていました。きつくて、挫折したのだといいます。30代はじめに一度やりきったと思い、建築から足を洗った。それでも、どこかでまた内装デザインのようなことをやりたいという心残りがあったそうです。

安藤さんは、父親の仕事の関係で福島県内を転々として育ち、結婚して須賀川へ。設計事務所を立ち上げたのは、ちょうど震災の年でした。始めようとした矢先に震災が起き、当時1歳だった子どものこともあって不安が重なり、大阪の住吉へ。12年を過ごし、子どもが中学生のときに戻ってきました。

築60年、昭和30年代のアパート

暁荘は築60年ほど。昭和30年代、東京タワーができたころの建物です。収録をしている5号室は、3畳ほどのキッチンに、3畳と6畳の部屋。トイレは入口にあり、お風呂はありません。

この物件の何に惹かれたのか。石井さんはもともと空き家が大好きで、ゾクゾクするようなワクワクで、妄想がふくらんでしまうのだそうです。安藤さんは、最初は隣の建物のほうが気になっていたけれど、「石井さんがそう言うなら」と始まったと笑います。断熱などは今の基準には及ばないものの、床はしっかりしていて、手を入れれば十分に使える状態でした。

あるものを、できるだけ残す

石井さんが大切にしたのは、できるだけあるものを残すこと。素敵なデザインの欄間や、ガラスの入った建具もなるべく残しました。一方で、モデルルームとして、どんな使い方にも応えられる空間にしなければならない。でも、やるからにはコンセプトもほしい。始める前は、かなり悩んだそうです。

たどり着いたのは、3畳の和室を「茶室」に、白いシートの床の6畳を「枯山水」のイメージにすること。押し入れだった場所は、床の間にしました。安藤さんは、枯山水という言葉を最初から聞いていたものの、正直イメージできていなかったとか。茶室は「石井さんらしい」と思ったそうです。

家賃を上げないための素材選び

暁荘は賃貸に出す部屋なので、コストを上げて家賃が上がるのは避けたい。素材はいくらでも選べるけれど、コストと施工のバランスを見ながら、安藤さんが提案し、石井さんの基準と照らし合わせて決めていきました。工事の前は、現地調査や図面、素材選びを二人で。工事が始まってからは、思い通りにいかない部分を現場ですり合わせていきました。

オーナーの倉庫に眠っていたダクト

不動産業を営むオーナーからは、ほかの物件で使わなくなったものも活かしたい、という希望がありました。最初は塗装の予定だった床の間の壁と天井。金属を使いたいと話したところ、オーナーの倉庫に眠っていた鉄製の排煙ダクトが候補に挙がり、それをばらして平らにし、張ることになりました。どう仕上がるかは、できあがるまで本当にわからなかったそうです。

オーナー、石井さん、安藤さん。三人がそろったからこそできた空間です。見学は、タイミングが合えば問い合わせで案内してもらえます。石井さんが期間限定で管理人をしているのだそう。床の間や、細かなこだわりの話は、次回の後編へ続きます。

印象に残った一言

できるだけ、あるものを残したいって思っていて。

前後の回

出演者

  • 佐藤美郷:南相馬市出身の編集者・ライター。メディア「ff_私たちの交換日記」とゲストハウス「guesthouse Nafsha」を運営するローカルエディター
  • はな & 隆志:移動販売の珈琲屋「GALATA COFFEE」を夫婦で営む。ウルトラFM「サンライズすかがわ」月曜パーソナリティ
  • 石井睦子:須賀川の「古道具 時雨」。暁荘7号室の改装を手がける
  • 安藤友美:「クラニスム」。暁荘7号室の改装を手がける